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2005年 5月22日 民族舞踊と国際交流(島根県益田市) 2日目
大ホールは、満席です。東京から参加したメンバーは、ドイツのフォークダンスを観るのは初めてです。

フォークダンスは、素朴で温かみがあります。
衣装がかわいい!

ダンスにはストーリーがあり、演目『機織り』では、手をつなげた状態が糸を表すそうです。
機を織る杼(ひ)=シャトルとなった人が、輪の間を縫って歩き、糸を紡いでいきます。軽やかなリズムで、農村に暮す人々の伝統が伝わってきます。

見てると、柔らかい日和が思い浮かびます。
島根県には社中と呼ばれる神楽の団体が約200もあるそうです。石見神楽さんは、その一つです。

四匹の鬼が、客席の奥から登場する神楽がありました。しなる棒を振り回し、観客席をどつきまわります。むちゃくちゃ危ないです。

これは
『頼政』という演目です。
悪鬼や龍を刺繍したド派手な金糸手縫いの衣装は、100〜200万円もするらしいです。いっぺん着てみたいです。
午前のプログラムが終わる前に、裏の駐車場で練習。師匠らと初めて一緒にやります。
師匠らが熱心に教えてくれました。直接指導はええ勉強になります。

しかし本番が近づいてくると、師匠らの気が立ってきます。
「おのれら気合い入れんかい!」と、人が変わります。
そういえば昨夜のビアガーデンで、村やんが言うてました。

「ワシな、本番になると人が変るから」

自覚はあるようです。
本番は「え、え、始まるの?」と思っているうちにスタートし、頭真っ白のまま舞台で踊って、客席に踊りこんで、おじいちゃん・おばあちゃんを勢いのまま噛みまくっていきました。あっという間でした。

「日頃の練習がそのまま出る。それ以上もそれ以下もない」

終わったあと師匠から握手を求められました。

「おまえら、良かったで」

この一言が嬉しかったです。ぼくは、ぜんぜん踊れてなかったのに、師匠は、「よかったで」と励ましてくれたんです。悔し嬉しさで、余計に(次はちゃんとやりたい)という気持ちになりました。
踊ったあとはしばらく興奮が抜けません。ハイテンションのまま、何か手伝わなくちゃと舞台裏をばたばた走り回っていると、先に終わった神楽の衣装担当の方がいました。

「試着してみる?」
「やったー、します、します。順番、順番、じゅんばーん」

ついてました。

「うわー、重てぇー。こんなん着て舞うん?すげぇー!」

昨晩一緒に飲んだ兄ちゃんらの顔が浮かびました。こんな重いもんを着て、あんな優雅に踊ってたんか。かっこええ〜。
神戸太鼓が始まりました。メンバーの一人が留学のためラスト舞台です。
神戸太鼓は児玉師匠のもと一致団結しています。児玉師匠は、厳しくて優しい、かっこええ親父です。

今日はいつも以上で、ビリビリとした空気が伝わってきます。一打一打に魂が込められ、気合いが漲っています。恐ろしく痺れます。

肉体と精神、刻むリズム。
細胞の一つ一つに振動が伝わってきて、全細胞に広がり共鳴していきます。
修練と結晶の太鼓。全身全霊とはこのことです。
たった6人なのに、圧倒的な響き。それも一人は、まだ6歳の孫娘ちゃんです。

感動で、何度も涙を流しそうになりました。ぐわっと起こる感情を殺すのに必死でした。
昨夜「10缶も飲んだもん」と眠りこけたヒロシのバチが折れました。すぐに予備に持ち替えて、打ち込む。盛り上がった筋肉。脳天をついてくる打音。

再び感動にうちのめされ、涙が出てきそうになりました。会場は一体となり、聴き入っていました。静かに湧き上がる喝采を、終わるまで持て余してる感じです。

終わって、拍手が鳴り止みませんでした。
石見神楽【大蛇】は、八頭のオロチが舞台を暴れまくります。まるで生きているような大蛇が、とぐろを巻き、尾を振り回し、圧巻です。
今日の舞台にはクシナダ姫も、そのおじいさん・おばあさんもいました。腰の曲がったおじいさんは、誰もが舞台真ん中のスサノオノミコトがオロチを倒すところを注目しているのに、ずっと細かい演技をしていました。
小刀で「エイ、エイ」と大蛇の尻尾を突き刺し、オロチからバシッとあしらわれると、よろけたりします。コミカルです。

最後のオロチをスサノオノミコトが斃すと尾から剣が出てきます。これが天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)と呼ばれる日本最強の剣です。スサノオノミコトが踊る
”喜びの舞”は、神楽の一番の見せ場です。神楽を観る島根県民の目は、厳しいです。見事舞いました。
ぼくら東京チームは、神戸に帰る師匠ら全員を見送った後、スサノオ師匠と一緒に『神楽寿司』でたらふく旨い地魚の寿司を食べ、酒を飲みました。

踊ったあとの寿司とビールほど旨いものはありません!すんません、神戸の師匠らはまだバスに揺られているのに!

師匠らは一人一人個性が強く、自分の意見を絶対に譲りません。気骨ある頑固者です。踊りが好きで、人が好きで、人と人の関わりを大切にします。
師匠らの、我が強い性格は「これだけは絶対譲れん」という信念があるからです。「俺はこう思うんや」と意見をぶつけてきます。それは飛び蹴りのときもあります。それに納得するか、反論するか。

舞台の上は、真剣勝負です。お客様の目によって丸裸にされ、もし適当にやっていたら一発でバレます。
同じ目標を目指すが、アプローチが違う。そこで激論を交わす。そうやって少しづつお互いを理解していく。だからおもろい。

そのとき、そこにいて、そこでやる。獅子舞はそのチャンスを与えてくれます。
こうして島根県の益田市で行われた『民族舞踊の国際交流』が閉幕しました。

羽田に着いて、一言。

「昨日の朝に、ここに集まったのよね?」
「うん」
「まるで一週間前のことみたい!」

全員、同感。こんなに充実した2日間は他にありません。めっちゃ楽しかったです。

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