海外公演    
Overseas tour

2006年 5月21日 タウンズビル → チャーターズ・タワーズ / 3日目
ホテルの近くを散歩してたら、朝市が開かれてました。
小さい女の子が、チェロを弾いていました。
たった半日の交流だけだったのに、お別れがとても寂しく感じられます。みんな、寂しそうです。哲さんが涙ぐんでました。

U-STAGEさんを見送ったら、今度はぼくたちの出発の番です。25人乗りのバスに乗り込んで、ここからマウントアイザまで
1,000kmを走ります。ドライバーはキースパパとノームさんです。

道具を積んだトラックを
ノームさんが、クルーを乗せたバスをキース・パパが運転してくれます。

ノームさんは映画『ロッキー』のロッキー・バルボワのような、もごもごしゃべりで、訛りが強いです。太い腕で、Tシャツから覗く肩口にはタトゥが彫られています。一見、怖そう?
1時間半ほどで、次の遠征地、チャーターズ・タワーズに到着しました。空模様が怪しいです。この時期にしては、QLD州ではめっちゃ珍しいそうです。

理由はおそらく、彼女のせいでしょう。獅子舞メンバーに、
S級の雨女がいます。しんしんです。
12月から毎月1回、練習のために彼女が東京へ来るときは、必ず雨が降りました。それも、どんなに晴れていても、ゲリラ豪雨のような雨が降ります。雨は、しんしんが大阪へ帰ると同時に、やんでいきます。嘘のような本当の話しです。

街をぶらぶらし、広報センターやお店をのぞくと、ワンダーバスのポスターが貼ってありました。こういうのを見ると、嬉しいです。
今夜は、お神楽と映画上映です。

ぼくは獅子メンバーと分かれて、会場の準備へ行きました。DVD&プロジェクター設置の協力です。残ったメンバーは、南中ソーラン節の特訓をしました。


最近の民生機プロジェクターの性能には驚きです。700人が入る大きい劇場のスクリーンでも、綺麗な映像が映せました。

神楽の舞台を準備していて、ぼくは、ふと照明が気になりました。舞台をフラットに明るくしてるだけで、味気ない照明でした。そこで、英語がしゃべれないくせに、「照明技師さんとしゃべりたい」とリクエストして、一緒に舞台天井の骨場に上がりました。

映写技師さんに手振り身振りで指示して、お神楽が幽玄的に舞台に映える感じを狙いました。

「踊るところはオレンジ系で少し明るく、お囃子の3人にはふわっと浮かびあがるような感じで」

ヴィクトリア様式の劇場
(ニューサウスウェールズ銀行、1880年)に似合った演出にしてもらいました。
巡業の旅は、食べて、寝て、移動する。そして、もう一つ重要な洗濯があります。
演舞のたびに汗をかくので、洗濯できる時間があれば、すぐ洗濯です。この時間を作るのが、なかなか難しいですが。

洗濯ものはみんなのを集めて、まとめて洗って、乾燥機をかけて、畳みます。全部まとめてやるので、どれが誰のかわからなくなります。
小学生みたいに、すべての衣類に名前を書きました。


名前がないものは、バスの中で「これ、誰の〜?」が始まります。ええ大人がパンツを開陳されて、「あ!それ、わたしの」は、結構恥ずかしいです。
夜の公演は、段取りが変更されて、獅子舞をやることになりました。「よっしゃー、ようやく出番や!」

夕闇過ぎた頃、劇場の前で踊りました。めっちゃ雰囲気がいいです。劇場外で演舞して、お客さんを劇場の中へ先導する役目です。初出番で、気合いが入りすぎました。それに、まだ5人の息が揃ってませんでした。
ぼく(父獅子)が、バーンと出ると、智恵ちゃん(ワキ)の頭にゴチーンと当たりました。

(あ、チエちゃん、かなり痛いかも)

と思いましたが、口からは「邪魔じゃいー。さっさと行かんかいー!」と怒鳴ってました。
獅子になると、ぼくは人が変わります。
面目躍如にはなってないけど、やっと本業の獅子舞ができて5人ともちょっと一安心しました。

劇場の中に入りました。キースたちのお神楽です。そのあと邦画『ウォーター・ボーイズ』を上映し、この2時間の隙に、ぼくたちは夕食です。お腹減った〜!

毎回、食事がめっちゃ楽しみです。このとき、あらためて自己紹介になりました。WONDERBUSツアー後半の、クルー紹介です。

実は、ぼくらは、まだ名前を覚えきれていませんでした。ときどき、こっそりと、「これは○○やんね?ほなら、あれは△△で合ってる?」なんてやっていました。
今日の演舞は、突然の出番だったんで、獅子メンバー5人だけでやりました。明日は、キースと理絵ちゃんにも入ってもらいます。2人と一緒に練習するのは、もちろん初めてです。

二人は、日本から送ったDVDでめっちゃ練習していました。初めてとは思えず、明日はいけそうです。

真っ暗の駐車場で、両手を挙げた日本人たちが怪しげなダンスをしていて、そして時々「ハイ、イッセツ!」と日本語が飛び交う様子を、もし、見ている外国人がいたら、かなり怖かったことでしょう。

そう実は、見ている人がいました。同じモーテルに泊まっていたオーストラリア人のおばちゃんです。近づいてきました。

「あなたたち、日本人でしょ?明日のイベントに行きたかったけど、お葬式のため行けなくなったの。
うちの息子に見せてやってほしい」

あらまぁ、楽しみにしてくださってたのに、残念。道具は出せませんが、せっかくなのでお見せしましょうと、練習したばかりの大祓いを披露しました。さらに少年くんは
南中ソーラン節を知っているというので、一緒に踊りました。

なんとオーストラリアの学校では、第2外国語として日本語が選べるようになってて、言語と一緒に文化を学び、その一つでソーラン節を習うそうです。

こういう日豪交流こそ、いいですなぁ。

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